北海道大学 2004年後期 全学歴教育「歴史の視座(論文指導)」
福祉国家の揺らぎ―歴史的比較


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シラバス


授業の目標:

近年の日本の年金改革論は、先進諸国に共通する福祉国家再編の動きの一貫である。グローバル化の進展とともに、どの国においても「福祉国家の揺らぎ」が議論されている。この動きは、グローバル化への対応だけでなく、雇用の不安定化、貧富の格差の拡大、家族の変容など、現代社会の主要な課題や、学生のみなさんがこれからの人生で直面するであろう多くの問題とかかわっている。
この授業では、こうした状況を念頭に、日本と欧米諸国(フランス、イギリス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ)の福祉国家形成の歴史を比較し、それぞれの国が抱えている問題の共通性と違いについて、概要を把握することを目指す。

到達目標:

(1)調査、報告、レポート作成の基本的な方法を身に着けること
(2)それぞれの国や社会が、歴史的に異なる経緯から形成されてきた事実を知ること
(3)現代福祉国家の抱える問題を、ある程度構造的に理解すること

授業計画:

この授業では、受講生が数人ずつのグループに分かれ、それぞれの国の歴史についてグループ毎に調査を行い、報告するという作業を中心とする。まず授業の最初に、エスピン・アンデルセンの議論をもとにして、比較体制史とは何か、どういう指標を軸に考えればよいのかを示す。次に、各国の福祉体制の概要を、できるだけ分かりやすく講義する。その上で、調査方法についてガイダンスを行い、フランスの歴史を事例として示す。その後、各グループ毎に、それぞれの国について調査・報告を行う(適時こちらでサポートする)。最後に全員で、日本との比較について討論を行い、理解を深める。

評価の基準と方法:

特別な事情のない限り、毎回の出席を義務とする。調査・報告への貢献(70%)と、学期末の報告書の内容(30%)で評価する。評価基準は、上記の到達目標にしたがって、三つとも充足で優、二つで良、一つで可。

備考:

この授業では、ホームページとe-mailを活用する。コンピューターを使えない人は、「情報処理」の講義を取っておくこと。

参考書:

エスピン=アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界―比較福祉国家の理論と動態』ミネルヴァ書房、2001年
各国ごとの参考資料は、授業の中で提示する。




講義内容と日程


10月 6日    ガイダンス + イントロダクション

10月13日   なぜ比較体制論か? ― 三つの世界論

10月20日   福祉国家の導入 ― 19世紀論

10月27日   福祉国家の発展 ― 戦後体制論

11月10日   福祉国家の危機 ― 新自由主義とグローバル化

11月17日   調査・レポート・発表の仕方

11月24日   福祉国家の行方@ ― 社会的排除

12月  1日   福祉国家の行方A ― グローバル化の将来

12月  8日   各国比較@ ― フランス、アメリカ

12月15日   各国比較A ― イギリス

12月22日   各国比較B ― ドイツ

 1月12日   各国比較C ― スウェーデン

 1月19日   各国比較D ― 日本

 1月26日   まとめ

 2月 4日   レポート締切